生活改善してもコレステロール値が変わらないときに
高コレステロールと診断されたら、まず、食事療法と運動などの療法を始めます。この療法を2~3ヶ月続け、様子を見ます。それでも総コレステロール値や中性脂肪値が下がらない場合、薬物治療を検討します。ただ、家族で狭心症などの発作をおこしたことがある人がいる場合などは、早めに薬物治療を始めることもあります。
動脈硬化をひきおこす因子をもっていれば薬での治療が必要に
高脂血症の治療は、動脈硬化の進行を防ぐことが目的です。そこで、コレステロール以外の動脈硬化の危険因子があるかどうかも、薬物治療を検討するときの目安になります。
高脂血症が軽度でも、糖尿病や高血圧のような危険因子がふたつある場合、ひとつでも症状が中等度以上であれば、薬物療法を行うことが多くなっています。
すぐに薬物療法を始めるのは、総コレステロール値が異常に高い、血糖値のコントロールが悪い、人口透析を受けている、膠原病でステロイド剤を使っているなどの場合です。
高脂血症のタイプによって使う薬が違う
高脂血症の薬は、血中脂質のどの数値を改善するかによって変わってきます。
LDLコレステロールを下げる
よく使用されるのは、強力なコレステロール低下作用のあるブラバスタチンやシンバスタチンなど肝臓でのコレステロールの合成を抑えるもの、肝臓へのLDLの取り込みを促進するプロブコールなどです。
高コレステロール血症の原因が、食事から摂取するコレステロールが多く、吸収率も高いことであるとわかっている場合には、コレステロール阻害薬が効果的です。
HDLコレステロールを上げる
禁煙や運動療法、肥満解消などで改善するのが基本ですが、ベザフィブラートという薬を使うことがあります。
中性脂肪を下げる
LDLの処理を促進させる作用のあるフィブラート系薬やニコチン酸誘導体、EPA製剤などがよく使われます。
ほかに、コレステロールと中性脂肪の両方を下げたいときには、フィブラート系薬やニコチン酸誘導体がよく使用されます。
検査値の異常度によって薬の種類が違う
治療薬には、コレステロールが急速に下がるものや、ゆっくりと効いてくるものがあります。
血中脂質の数値によって、ゆっくり効く薬を投与するか、急速に効く薬を投与するか判断されます。
コレステロール・中性脂肪を下げる薬の種類と作用
陰イオン交換樹脂
- コレスチラミン(クエストラン)
- コレスチミド(コレバイン)
作用
腸管内で胆汁酸を吸着し、糞便中への排泄を促進させる。その結果、コレステロールから胆汁酸への異化が促進し、LDLコレステロール値が低下する。
副作用
腸閉塞、横門筋融解症
プロブコール
- シンレスタール
- ロレルコ
作用
コレステロールから胆汁酸への異化排泄を促進する。また強力な抗酸化作用をもつ。
副作用
心室性不整脈、消化管出血、横門筋融解症
HMG-CoA 還元酵素阻害薬
- プラバスタチン(メバロチン)
- シンバスタチン(リポバス)
- フルバスタチン(ローコール)
- アトルバスタチン(リピトール)
- ピタバスタチン(リバロ)
- ロバスタチン(クレストール)
作用
HMG-CoA 還元酵素をを拮抗的に阻害し、コレステロール合成を抑制する。その結果、肝臓のLDL受容体が増加し、血中LDLの肝臓内取り込みが促進され、LDLコレステロール値を最も効果的に低下させる。またHDLコレステロール値を増加させる。
副作用
肝障害、横門筋融解症、血小板減少症
フィブラート系薬
- フェノフィブラート(リパンチル)
- クリノフィブラート(リポクリン)
- クロフィブラート(ヒポセロール)
- ベザフィブラート(ベザトールSR)
作用
リポタンパクリパーゼを活性化してVLDLの異化を促進、コレステロールから胆汁酸への異化・排泄を促進、肝臓でのコレステロール・中性脂肪合成を抑制することで、最も効果的に中性脂肪を低下させる。またHDLコレステロールを増加させ、LDLコレステロールを低下させる。
副作用
肝障害、横門筋融解症、すい炎、無顆粒球症、皮膚粘膜眼症候群
ニコチン酸誘導体
- ニコチン酸トコフェロール(ユベラニコチネート)
- ニセリトロール(ベリシット)
- ニコモール(コレキサミン)
作用
脂肪組織の脂肪分解を抑制し、中性脂肪の合成を抑制する。またリポタンパクリパーゼを活性化してVLDLの異化を促進、コレステロールから胆汁酸への異化・排泄を促進させることで、中性脂肪を低下、LDLコレステロールの低下、HDLコレステロールを増加させる。
副作用
血小板減少症
EPA製剤
- イコサペント酸エチル(エパデール)
作用
中性脂肪の腸官からの吸収を抑制、肝臓での生合成をを抑制、肝臓からの分泌を抑制する。
副作用
血小板凝集抑制による出欠