ホルモン補充療法 更年期の治療

不安定になっている女性ホルモンを外から補う方法

更年期のさまざまな不快症状は、卵巣の機能の低下にともなって、女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少したり、分泌が不安定な状態になったとき起こります。
そこで、外から飲み薬や貼り薬などによってホルモンを補ってあげて、ホルモンの急激な減少に体が無理なくついていけるようにするのがホルモン補充療法(HRT)です。

更年期障害に有効な治療法

欧米ではホルモン補充療法(HRT)はもっとも有効な更年期障害の治療法として、主流ですが、日本ではまだ少ないようです。
副作用が心配な人もいると思いますが、大切なことは、ホルモン補充療法(HRT)の長所と短所を正しく理解して、自分で納得して使いましょう。

ホルモン補充療法(HRT)の効果

つらい症状から開放される

ホルモン補充療法は、更年期の症状の原因であるエストロゲン不足を外から補う療法で、更年期特有の自律神経失調症に抜群の効果を発揮します。しかも、多彩な症状をそれぞれ治療するとなると、何種類もの薬が必要になりますが、HRTだとそれだけで総合的な効果が得られます。また、短期間で効果が得られる点も特徴のひとつです。

気分を明るくする効果も

エストロゲンには、気分を明るく作用がありますから、ホルモン補充療法を受けた多くの人が「気分が明るくなった」と言われます。

性交痛や頻尿の改善

膣のヒリヒリ感や性交痛など、人には言いにくい悩みは、更年期を迎えた多くの人が感じていることです。エストロゲンには、皮膚や粘膜組織を強くしてみずみずしく保つ働きがあり、ホルモン補充療法によって膣粘膜の潤いも取り戻せます。

アンチエイジング効果も

更年期からは、エストロゲンの減少によって、皮膚のコラーゲンや角質水分量が失われていきます。できてしまったしわやしみは消せませんが、エストロゲンを補充することで、コラーゲンが増えたり、肌の水分量をキープできるなど、若々しさを保つ効果があります。また、皮膚の違和感や全身の皮膚のかゆみ・かさつきの改善にもつながります。

骨量の減少の防止

更年期には、大きな自覚症状もないまま骨粗しょう症や動脈硬化などの慢性的な症状が進行しています。
女性の骨量は、30代半ばをピークに減り続け、閉経後、数年から10年ほどで2~3割も減少していきます。平均的な閉経年齢である50歳ころから骨量の減少はかなり進み、骨粗しょう症がすでに始まっていると言えるでしょう。
60代に入ると腰や背中などに持続的な痛みや骨折などのはっきりした症状が現れはじめ、65歳以上で半数近くの人が、80歳以上では7割以上の人が骨粗しょう症にかかっていると言われています。

このように加齢とともに進む骨量減少に歯止めをかけて、骨粗しょう症を予防するためにもホルモン補充療法は効果を発揮します。

生活習慣病の予防効果も

動脈は、全身に血液を送り込んでいる重要な血管です。動脈硬化とは、動脈が老化や病気などで弾力を失い、硬くもろくなった状態で、心筋梗塞や脳梗塞など、心疾患や血管障害の発生率が高くなります。
これらの病気は、50歳ころまでは、男性の発症率が圧倒的に高いのですが、それ以降では女性も高くなり、60代以降では男性と同じになります。

エストロゲンの働きで守られていたコレステロールの増加が、閉経によるエストロゲンの低下で、一気にその抑制が解かれてしまうのが原因です。
エストロゲンには悪玉コレステロールを低下させて、善玉コレステロールの合成を促進させる作用があり、さらに動脈硬化を防ぐ効果もありますから、ホルモン補充療法を行うことによって、心筋梗塞や脳梗塞などの病気の予防にも役立ちます。

ホルモン補充療法の副作用について

子宮体がんの心配

ホルモン補充療法が始まったころは、エストロゲンだけを単独で投与していたために、子宮体がんの発症率が高くなりました。エストロゲンには子宮内膜を増殖させる作用があるために、子宮がんも発育させてしまったのです。
そこで、本来の月経における自然な女性ホルモンの働きと同じ状態にするため、エストロゲンと排卵後に分泌されるプロゲステロンを併用するようにしたところ、子宮内膜の増殖は抑えられ、むしろ子宮体がんの発生は少なくなりました。

乳がんのリスク

ホルモン補充療法は乳がんの発生リスクも高めないことがわかっています。乳がんの発症リスクを減らしはしないものの増やしもしないということです。
ホルモン補充療法を行うときには、半年から1年ごとに乳がん、子宮がんや肝機能などの定期健診を行いますから、仮に検診で病気が見つかったとしても早期発見・治療が可能です。

そのほかの副作用

女性ホルモンの影響を受ける子宮内膜症や子宮筋腫、乳腺症などの病気がある人は、ホルモン補充療法を行うことで閉経後おさまっていた症状が再び出てくる可能性があります。
その他、女性ホルモンを投与することで、月経のような出血が起こりますが、出血が起きてもその量はだんだん少なくなり、1~3年ほどでなくなります。また出血が始まるパターンも終わるパターンも分かってきますので、あまり不安がらずに対応しましょう。
また服用しはじめでは、月経前のように乳房の張り、むくみ、おなかの張り、イライラ、吐き気などが起こることがあります。これらの症状は、薬の種類を替えたり量を加減して、様子を見るうちに消えることがほとんでです。

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